県知事による特定ブランドPRは問題なのか―「兵庫の食」をどう伝えるべきかを考える
兵庫県の斎藤元彦知事は、X(旧Twitter)での発信の中で、「岩津ねぎ」や「揖保乃糸」といった兵庫県内の特定ブランドを紹介しています。
地元の名産品を発信すること自体は、一見すると何の問題もないように思えます。
しかし、行政トップである県知事の立場を考えると、「特定ブランドだけを強調する発信」に対して、疑問を持つ声が出てくるのも自然なことです。
本記事では、
「何が問題になり得るのか」
「本来、県知事の広報はどうあるべきなのか」
を冷静に整理してみたいと思います。
本日は県議会代表質問でした。来年度予算編成、観光誘客、医療福祉など、重要政策テーマについて各会派と建設的議論を交わしました。観光については、食や温泉、HFPなど兵庫の強みを活かす誘客戦略が重要です。その兵庫の「食」を代表する逸品として、先日、朝来市特産の『岩津ねぎ』が解禁されました… pic.twitter.com/EtIx2yZ2il
— 兵庫県知事 さいとう元彦 (@motohikosaitoH) December 5, 2025
本日は関西広域連合議会の防災委員会が徳島県で開催されました。トイレカーなど避難生活の改善に有効な車両について、関西全体での保有状況を随時把握し、災害時に集中活用する仕組みを強化する方針を表明しました。冷え込む今夜は鍋に。冷凍餃子と野菜をシンプルに煮込み、〆は西播磨名産の『揖保乃糸… https://t.co/M3OKb6xXHe pic.twitter.com/nDgGFVnUqD
— 兵庫県知事 さいとう元彦 (@motohikosaitoH) December 13, 2025
目次
特定ブランドを紹介すること自体は違法ではない
まず前提として、県知事がSNSなどで特定の農産物や食品ブランドを紹介すること自体は、直ちに違法でも不正でもありません。
多くの自治体首長が、
- 季節の特産品
- 解禁された農産物
- 地元の食文化
を紹介することは、ごく一般的です。
その意味で、「岩津ねぎ」や「揖保乃糸」を紹介したこと自体が問題なのではありません。
問題の本質は「行政トップとしての公平性」
問題になり得るのは、発信のバランスと文脈です。
兵庫県には、
- 素麺だけでも複数の産地・ブランド
- 農産物や水産物も地域ごとに多様な特色
があります。
その中で、
- なぜこのブランドなのか
- 他の地域や産品との位置づけはどうなのか
といった説明がないまま、特定のブランド名だけが繰り返し前面に出ると、「行政としての公平性」に疑問を持たれる可能性があります。
県知事は、特定地域や特定事業者の代表ではなく、県全体の利益を最大化する立場にあるからです。
富山県の「寿司」戦略との違い
よく比較されるのが、富山県の「寿司」とのブランド戦略です。
富山県の場合、
- 「寿司と言えば富山」
- 特定の店や銘柄ではなく
- 県全体の水産業・観光・食文化を束ねた発信
が行われています。
これは、個別ブランドを超えた「包括的な県全体戦略」です。
一方で、兵庫県の発信が、
- 岩津ねぎ
- 揖保乃糸
といった個別ブランドの紹介にとどまっているように見えると、県としての一貫した戦略が伝わりにくくなります。
行政広報に求められるのは「全体像」
本来、行政トップの発信で求められるのは、
- 兵庫の「食」全体の魅力
- その中での各地域・各ブランドの役割
- なぜ今、それを取り上げるのかという理由
といった全体像の提示です。
例えば、
- 「兵庫の素麺文化」
- 「兵庫のねぎの多様性」
- 「地域ごとの特色がどう県全体の魅力につながるのか」
という文脈が示されれば、特定ブランドを紹介しても、不公平感は生まれにくくなります。
問われているのは「好き嫌い」ではない
この問題は、特定の食材が好きか嫌いか、あるいは個々のブランドの価値の問題ではありません。
問われているのは、
県知事として、県全体をどう見て、どう語っているのか
という行政姿勢です。
- 公平性への配慮
- 説明責任
- 全体戦略の有無
これらが見えない発信は、支持・不支持を超えて、県政への信頼を静かに損なっていきます。
おわりに
特定ブランドを紹介すること自体は、決して悪いことではありません。
しかし、それが県全体の中でどう位置づけられているのかを示さなければ、行政トップの発信としては不十分に映ってしまいます。
「兵庫の食」を本当にブランドとして高めるのであれば、個別の点ではなく、線や面としての語り方が求められているのではないでしょうか。
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