県知事による特定ブランドPRは問題なのか―「兵庫の食」をどう伝えるべきかを考える

兵庫県の斎藤元彦知事は、X(旧Twitter)での発信の中で、「岩津ねぎ」や「揖保乃糸」といった兵庫県内の特定ブランドを紹介しています。
地元の名産品を発信すること自体は、一見すると何の問題もないように思えます。

しかし、行政トップである県知事の立場を考えると、「特定ブランドだけを強調する発信」に対して、疑問を持つ声が出てくるのも自然なことです。

本記事では、
「何が問題になり得るのか」
「本来、県知事の広報はどうあるべきなのか」

を冷静に整理してみたいと思います。

特定ブランドを紹介すること自体は違法ではない

まず前提として、県知事がSNSなどで特定の農産物や食品ブランドを紹介すること自体は、直ちに違法でも不正でもありません。

多くの自治体首長が、

  • 季節の特産品
  • 解禁された農産物
  • 地元の食文化

を紹介することは、ごく一般的です。

その意味で、「岩津ねぎ」や「揖保乃糸」を紹介したこと自体が問題なのではありません。

問題の本質は「行政トップとしての公平性」

問題になり得るのは、発信のバランスと文脈です。

兵庫県には、

  • 素麺だけでも複数の産地・ブランド
  • 農産物や水産物も地域ごとに多様な特色

があります。

その中で、

  • なぜこのブランドなのか
  • 他の地域や産品との位置づけはどうなのか

といった説明がないまま、特定のブランド名だけが繰り返し前面に出ると、「行政としての公平性」に疑問を持たれる可能性があります。

県知事は、特定地域や特定事業者の代表ではなく、県全体の利益を最大化する立場にあるからです。

富山県の「寿司」戦略との違い

よく比較されるのが、富山県の「寿司」とのブランド戦略です。

富山県の場合、

  • 「寿司と言えば富山」
  • 特定の店や銘柄ではなく
  • 県全体の水産業・観光・食文化を束ねた発信

が行われています。

これは、個別ブランドを超えた「包括的な県全体戦略」です。

一方で、兵庫県の発信が、

  • 岩津ねぎ
  • 揖保乃糸

といった個別ブランドの紹介にとどまっているように見えると、県としての一貫した戦略が伝わりにくくなります。

行政広報に求められるのは「全体像」

本来、行政トップの発信で求められるのは、

  • 兵庫の「食」全体の魅力
  • その中での各地域・各ブランドの役割
  • なぜ今、それを取り上げるのかという理由

といった全体像の提示です。

例えば、

  • 「兵庫の素麺文化」
  • 「兵庫のねぎの多様性」
  • 「地域ごとの特色がどう県全体の魅力につながるのか」

という文脈が示されれば、特定ブランドを紹介しても、不公平感は生まれにくくなります。

問われているのは「好き嫌い」ではない

この問題は、特定の食材が好きか嫌いか、あるいは個々のブランドの価値の問題ではありません。

問われているのは、

県知事として、県全体をどう見て、どう語っているのか

という行政姿勢です。

  • 公平性への配慮
  • 説明責任
  • 全体戦略の有無

これらが見えない発信は、支持・不支持を超えて、県政への信頼を静かに損なっていきます。

おわりに

特定ブランドを紹介すること自体は、決して悪いことではありません。
しかし、それが県全体の中でどう位置づけられているのかを示さなければ、行政トップの発信としては不十分に映ってしまいます。

「兵庫の食」を本当にブランドとして高めるのであれば、個別の点ではなく、線や面としての語り方が求められているのではないでしょうか。

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jordan192
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