兵庫県知事定例会見での質疑応答を読み解く-「他の自治体も改正している」発言と公益通報者保護法をめぐる論点
2026年3月4日の兵庫県知事定例会見で、公益通報者保護法に関する県の実施要綱の改正について、フリー記者から厳しい質問が行われました。
今回の質疑は一見すると長いやり取りですが、実際には非常にシンプルな論点に集約されています。
記者が尋ねた内容は主に次の3点です。
- 他の自治体も要綱改正をしていると発言した根拠
- 3号通報に関する知事発言の撤回の有無
- 3号通報が保護対象となった時期
しかし、会見のやり取りを見ると、これらの質問に対する明確な回答は示されませんでした。
ここでは、会見の内容を整理しながら、論点を分かりやすく解説します。
目次
問題となった「他の自治体も改正している」発言
今回の質疑の発端は、2025年1月14日の知事会見での発言です。
知事は当時、
「兵庫県のみならず他の自治体でも改正対応されている」
という趣旨の説明をしていました。
しかし、今回の会見では次のような事実が示されました。
消費者庁の回答
記者が法を所管する消費者庁に問い合わせたところ
「兵庫県以外でそのような自治体があることは把握していない」
という回答だったとのことです。
県議会での答弁
さらに2026年2月13日の兵庫県議会総務常任委員会では、県政改革課長が
「他に改正している自治体があるとは聞いていない」
と答弁しています。
つまり、
- 国の所管庁
- 兵庫県の担当部局
の両方が
「他自治体の改正は把握していない」
という状況でした。
そのため記者は
「では知事が言う自治体はどこなのか」
と質問しました。
知事の回答
知事は次のように説明しました。
- 他自治体の動向を把握している
- 様々な自治体が様々な対応をしている
- 手元に資料がない
しかし、
具体的な自治体名は示されませんでした。
そのため、この部分の質問は明確な回答が出ないまま終わりました。
公益通報者保護法と「3号通報」の問題
もう一つの大きな論点は、公益通報者保護法における「3号通報」の扱いです。
公益通報者保護法では、通報の種類が次のように区分されています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 1号通報 | 内部通報(勤務先など) |
| 2号通報 | 行政機関への通報 |
| 3号通報 | 外部通報(報道機関など) |
現在の法制度では、一定の条件を満たす場合、
3号通報も保護対象となります。
知事の過去発言
問題となっているのは、2025年3月26日の知事発言です。
知事は当時、
「3号通報は保護対象にならないという考え方もある」
という趣旨の発言をしていました。
今回の会見で記者は
この発言を撤回するのか
を確認しました。
知事の説明
知事は次のように説明しました。
「専門家の意見があるということを紹介した」
つまり、
自身の見解ではなく、専門家の意見を紹介しただけ
という立場を示しました。
ただし、発言の撤回については明確に言及されませんでした。
もう一つの質問
「3号通報はいつから保護対象なのか」
記者はさらに次の質問をしました。
3号通報が保護対象になったのは
- 県の要綱改正後なのか
- 元々そうだったのか
というものです。
しかし知事の回答は
法の趣旨を踏まえ適切に対応している
という説明にとどまり、
どちらなのかは明確に示されませんでした。
会見の構造
なぜ議論が噛み合わないのか
今回の会見の特徴は、
質問と回答の形式が一致していない
ことです。
| 記者の質問 | 知事の回答 |
|---|---|
| 他自治体はどこか | 動向を把握している |
| 発言を撤回するのか | 専門家の意見を紹介 |
| いつから保護対象か | 法の趣旨に基づき対応 |
つまり、
具体的質問に対して抽象的回答
という構造になっています。
このため、議論がかみ合わない形になりました。
行政現場への影響
今回の質疑の中で記者は、
知事の発言が発端となり、担当部局が議会で苦しい答弁をしている
と指摘しました。
実際に県議会では担当課長が
- 他自治体の改正は聞いていない
- 法解釈について説明が難しい
という状況で答弁しています。
政治の発言と行政の説明責任の間にギャップが生じると、
現場の行政職員が対応に苦しむケースは少なくありません。
知事と担当部局のコミュニケーション問題も浮き彫りに
今回の会見では、もう一つ重要な問題が浮かび上がりました。
それは知事と担当部局とのコミュニケーションの問題です。
記者が指摘したように、今回の公益通報者保護法を巡る問題では、
- 知事の発言
- 県の担当部局の答弁
の間に明確な食い違いが見られます。
例えば、知事は会見で
「他の自治体でも要綱改正しているところがある」
と発言していますが、県議会では担当部局が
「他に改正している自治体があるとは聞いていない」
と答弁しています。
このような状況は、行政組織においては非常に難しい状態を生みます。
知事の発言と行政の説明が一致していない場合、
現場の職員は
- 知事発言を前提に説明を作る
- しかし根拠がない
- 結果として説明ができない
という状態に陥ってしまうからです。
片山副知事が指摘していた「コミュニケーションの課題」
この問題を考える上で思い出されるのが、
片山副知事の退任会見での発言です。
片山副知事は、知事の能力について次のように評価しています。
「知事は基本的には政策遂行能力はきっちりおやりになれる方」
その一方で、課題として次の点を指摘しました。
職員とのコミュニケーション
片山副知事は、
知事は職員とのコミュニケーションに課題がある
と率直に述べています。
特に重要な点として挙げたのが、
- 相手が何を聞きたいのかを考えること
- その質問に対してどう答えるのか
という基本的なコミュニケーションです。
片山副知事は
聞いている人が何を聞きたいのかに答えることで歯車がかみ合う
と説明しています。
今回の会見のやり取りを見ると、
まさにこの問題がそのまま表れているようにも見えます。
「最初の対応」が重要だったという指摘
さらに片山副知事は、今回の問題の発端となった
「嘘八百」発言
についても言及しています。
片山副知事は次のように語りました。
- 人事当局は「嘘八百」という言葉は使っていない
- 知事の発言を聞いた時に違和感があった
そして重要な指摘として
行き過ぎた発言だったなら、すぐに謝るべきだった
と述べています。
つまり問題は、
発言そのものよりも初期対応
だった可能性があります。
行政や政治の危機対応では、しばしば
「初動がすべてを決める」
と言われます。
片山副知事も
最初が肝心だった
と振り返っています。
現場が辻褄合わせに追われる構造
知事が先行して発言し、
その後に行政が説明を整えるという構造になると、
現場の職員は非常に難しい対応を迫られます。
特に今回の問題のように
- 法解釈
- 公益通報制度
- 内部通報制度
といった専門的な制度が関わる場合、
発言と制度の整合性を取ることは簡単ではありません。
今回の会見でも記者は、
知事の発言が発端となり、担当部局が苦しい答弁をしている
と指摘しています。
実際に県議会の委員会では、担当課長が
苦しい説明を続ける場面も見られました。
行政運営において重要なこと
行政組織においては
- 政治判断(知事)
- 行政実務(職員)
が連携して動く必要があります。
そのためには
- 情報共有
- 発言の調整
- 法制度の理解
といったコミュニケーションが不可欠です。
片山副知事が退任会見で語った
相手の立場に立って考える
という言葉は、
政治と行政の関係においても重要な意味を持っているのかもしれません。
今回の会見の論点まとめ
今回の質疑の核心は、実は非常にシンプルです。
記者の質問は次の3点でした。
- 他自治体の改正はどこか
- 3号通報発言を撤回するのか
- 3号通報はいつから保護対象なのか
しかし会見では、
これらの質問に対する明確な回答は示されませんでした。
今後、兵庫県として
- 他自治体の動向
- 法解釈
- 要綱改正の理由
について、より整理された説明が求められる可能性があります。
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