公益通報とは何か ― 「真実」と「真実相当性」の違い 論点整理②
兵庫県の文書問題では、「公益通報に当たるのかどうか」という点が大きな論点になっています。
SNSなどでは次のような主張が見られます。
- 文書の内容は事実ではない
- だから公益通報ではない
- 真実ではない通報は保護されない
一方で、第三者委員会は、文書の一部について「真実相当性がある」と判断しました。
ここで重要になるのが、公益通報制度における「真実」と「真実相当性」の違いです。
この記事では、公益通報者保護法の基本的な考え方を整理したうえで、今回の文書問題で議論になっているポイントを整理します。
目次
公益通報とは何か
公益通報とは、企業や行政機関の中で行われている法令違反などについて、内部の関係者が通報する行為を指します。
日本では、公益通報者を保護するために
公益通報者保護法
という法律が制定されています。
この法律の目的は、次のようなものです。
- 不正行為の早期発見
- 組織の自浄作用の促進
- 通報者の保護
つまり、通報を萎縮させないことが制度の重要な目的です。
公益通報の要件
公益通報として保護されるためには、いくつかの要件があります。
代表的な要件は次の通りです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 通報対象事実 | 法令違反などに関する事実 |
| 通報者 | 労働者などの内部関係者 |
| 通報先 | 事業者・行政機関・報道機関など |
| 目的 | 不正の目的ではないこと |
この中でも特に議論になるのが
通報内容の信頼性
です。
「真実」と「真実相当性」
公益通報制度では、通報内容が必ずしも「真実」である必要はありません。
ここで重要になる概念が
真実相当性
です。
真実相当性とは、
通報内容が事実であると信じる合理的な理由があること
を意味します。
つまり、
- 実際に事実である必要はない
- しかし、そう信じる合理的な理由は必要
という考え方です。
なぜこの制度があるのか
もし公益通報が
「完全に事実である場合のみ保護される」
とすると、内部告発はほとんど不可能になります。
なぜなら、内部の人間は
- 全ての証拠を持っているわけではない
- 全体像を把握しているとは限らない
からです。
そのため、公益通報制度では
合理的な理由があれば通報を保護する
という考え方が採用されています。
今回の文書問題での議論
兵庫県の文書問題では、
「文書の内容が事実ではない」
という主張が多く見られます。
しかし、公益通報制度では
事実であるかどうか
と
真実相当性があるかどうか
は別の問題です。
第三者委員会の報告書では、いくつかの事項について
- 真実相当性が認められるもの
- 認められないもの
が区別されています。
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk19/bunsho_daisansya.html
真実相当性の判断
真実相当性は、通常次のような要素から判断されます。
| 判断要素 | 内容 |
|---|---|
| 情報源 | どこから得た情報か |
| 客観的事情 | 疑いを持つ合理的理由 |
| 調査可能性 | 当時確認できた範囲 |
つまり、
後から見て事実であったかどうかではなく
通報時点で合理的理由があったか
が判断基準になります。
不正目的の問題
公益通報制度では、もう一つ重要な要件があります。
それが
不正目的の有無
です。
不正目的とは例えば
- 個人的な報復
- 競争相手の妨害
- 名誉毀損
などです。
しかし、通報者が組織に対して不満を持っていたとしても、それだけで不正目的とは認定されません。
公益目的と個人的動機が混在している場合でも、公益目的が認められれば保護されることがあります。
通報制度の難しさ
公益通報制度は、次の二つのバランスの上に成り立っています。
| 保護する必要 | 防ぐ必要 |
|---|---|
| 内部告発の萎縮 | 悪意ある告発 |
つまり
- 通報を保護しすぎると濫用の可能性
- 厳しくしすぎると通報が消える
という難しい制度です。
今回の問題の本質
兵庫県の文書問題では、
次の点が議論になっています。
- 文書は公益通報に当たるのか
- 真実相当性は認められるのか
- 不正目的はあったのか
これらは法律上も判断が難しい問題です。
そのため
- 行政判断
- 第三者委員会の評価
- 司法判断
など複数のレベルで議論されることになります。
まとめ
公益通報制度では
通報内容が完全な事実である必要はありません。
重要なのは
- 合理的理由があったか
- 不正目的ではないか
という点です。
兵庫県の文書問題では、この制度の考え方をめぐって様々な解釈が提示されています。
問題を理解するためには
- 制度の仕組み
- 事実関係
- 評価
を分けて整理することが重要です。
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